高齢者の足のむくみとリンパ浮腫の関係
リンパ浮腫とは?

リンパ浮腫とは、リンパ管の流れが悪くなることでタンパク質や水分などがリンパ管の外に染み出し、皮下組織に溜まることによってむくみを生み出した状態を表します。皮膚の色の変化は起こらず、むくんだ皮膚は白く膨らむというのが特徴ですが、症状が進むにつれ、タンパク質が組織内に溜まっていくとその周辺細胞が線維化して皮膚がかたくなっていきます。
足のむくみが起こる理由にはいろいろありますが、主に血流やリンパの流れが滞ることが主な原因とされており、そのうちの1つがこのリンパ浮腫です。高齢者が下肢にリンパ浮腫を発症した場合、むくみによって動きに負荷がかかることから腰痛や膝痛を併発することが多く、またそれによって座っている時間が長くなり、筋力が低下してさらにむくみが重症化してしまうという例が多いようです。
リンパ浮腫はいわゆる「むくみ」として表れるため血流の滞りによるものと自己判断してしまうことが多く、またその両方を併発していることも多いようですが、リンパ浮腫特有の症状や原因にはどんなものがあるのかを見てみましょう。
まずリンパ浮腫には一次性と二次性の2種類があり、一次性は原因がわからないものあるいは先天性のものを指します。2〜3歳までに発症する早発性と35歳前後で発症する遅発性があり、リンパ浮腫全体から見ると割合は少ないようです。
二次性は乳がんや子宮がん、皮膚がんなどの手術でのリンパ節の切除や術後の治療による狭窄や圧迫によって起こるもので、リンパ浮腫の原因の多くはこちらの二次性であり、高齢者にも多く見られます。
症状としては、片方の腕や足に白いむくみが表れることが多く、両方に表れた場合でも左右で場所や症状が異なります。色の大きな変化はなく、むくみが比較的ゆっくりと進行するため初期段階では気付かれない場合が多いようですが、進行すると皮膚がかたくなり、シワが寄ったり剛毛が生えたりすることもあるようです。合併症として組織の炎症である蜂窩織炎やリンパ管炎を併発することが多く、そうなると状態が一気に悪化するためリンパ浮腫は合併症を起こさないための予防が非常に重要であると言われています。

リンパ浮腫の治療
リンパ浮腫とその他の原因によるむくみでは治療方法が異なるため、手足にむくみが見られる場合にはまずリンパ浮腫であるかどうかの検査が行われます。そしてリンパ浮腫であることが確定した場合、多くの場合は保存的治療として以下の4つを組み合わせた複合的理学療法が適用されます。
リンパドレナージ
むくみのある部分に手をあてて皮下組織に溜まった体液を移動させるマッサージ
圧迫療法
スリーブやストッキングのような弾性着衣や弾性包帯によって継続的に圧をかける
圧迫した状態での運動
弾性着衣や弾性包帯をつけた状態で関節を動かす運動を行う
スキンケア
浮腫の悪化や合併症を予防するため、乾燥を防いで炎症を抑えるスキンケアを行う
この他にも進行の度合いによっては外科的治療としてリンパ管微小静脈吻合を行う医療機関もありますが一部の医療機関でしか行われておらず、また薬物療法はあまり推奨されないため、現時点では上記の保存的治療が最も有効とされています。リンパ浮腫は皮膚の硬化が始まる前であれば治療効果が高いと言われています。やはりむくみが気になったら早めに診察を受けることをおすすめします。
